それは誰のもの?
★
うっかりすると他人の物語を読むことに熱中してしまい、自分を疎かにしてしまいがちだった。
あの人ってすごいなー。
あんな生活できていいなー。
まるであの人が正解で自分が不正解なような気がしてしまう。
自分の暮らしは棚に上げて、わざわざ今あるものは使わずに新しく手に入れようと躍起になっていた。
あの人みたいになれば私の心は満たされるはずだ!
皆が喜ぶものを手に入れよう。
私の持っているものなんてガラクタみたいで役に立つはずもない。
そんなものよりも新しくて綺麗なものを手に入れよう。そうすれば心は満たされるはず。
こうして、幸せとは逆な方向へと進み始めてしまった。
なんとなく毎日つまらないな。。
綺麗なものを手に入れようと頑張っているのに。
そんなある日、道を歩いていると不可思議な曲が聴こえてきた。
心地いいというよりは、心を揺さぶられるようななんとも表現できない曲だった。
癒されるとかそんな類のものではないのだけれど、私の心は踊っていた。
これでいいんだ!と、ふと気がついた。
綺麗でもなく、皆を心地よくさせることができなくてもいいんだ。
私は急いで家に帰り、奥にしまいこんで見えないようにしていたガラクタ達を表に出した。
あれ?これすごい、いいな。
いったい何故ガラクタだと思ってしまっていたのだろう。
家に遊びに来た人たちも見えるようにそれらを棚に綺麗に飾ってみた。
なんだろうこの気持ちは。
なんだか、誇らしいな。
0コメント